変形性膝関節症について

診断

まず、外来で診察させて頂き、症状やどのような動作で痛みが出現するのかをお聞きします。
そして、片足で立った状態でレントゲン撮影をしたり、MRI撮影で残っている軟骨の量を測定します。

治療

残っている軟骨の量によって、治療法が異なります。
おおまかに言えば、軟骨が半分以上残っていれば、手術をせずに治療(保存療法)を行います。
軟骨が半分以下であったり、全く残っていなくても全員手術をする訳ではありません。
まず、保存療法をして、症状の改善がなく、本人が手術を希望された場合のみ手術になります。
軟骨再生に関しては、世界中で研究されておりますが、現在のレベルでは若年者のみにしか効果がなく、高齢者には効果のある薬は開発されておりません。
今後20年待っても期待される程の効果を認める薬は開発されないでしょう。
よく外来でグルコサミンやコンドロイチンなどサプリメントを飲んだらいいのではと患者さんから聞かれますが、多少進行を遅くする可能性はありますが、残念ながら軟骨が増えることはありません。

(1)保存療法

まず、手術をしないで進行を遅くしたり、症状を緩和させる治療法(保存療法)を列挙します。
しかし、この治療法は根本的な原因を全てなくせるわけではありません。

  1. 減量(ダイエット):肥満傾向のある方のみ
  2. 筋力訓練:太腿(ふともも)の筋肉(大腿四頭筋)の筋力増強
  3. ストレッチング:膝や股関節,腰のすじや筋肉を柔軟にすることによって同じ姿勢になることを防ぎ膝のみならず他の部分にも負担がかかりづらくなります.
  4. 足底板:靴の中敷きや足の裏に装具を装着して,体重のかかり具合を調整
  5. 消炎鎮痛剤:痛みを和らげる内服薬や湿布
  6. 関節内注射:ヒアルロン酸ナトリウムという軟骨の構成成分を注入
  7. 日常生活動作の指導:正座やしゃがみ動作を避ける

(2)手術療法

保存療法で効果がなく、日常生活にかなり支障をきたしている方に限って手術を行うことがあります。
以下に、手術方法を列挙します

1.関節鏡視下半月板切除術:
関節鏡という小さな内視鏡を膝に挿入して痛んだ半月板を一部切除する手術です。
約1cmの小さな傷を2ヶ所作るだけで治療を受けられ、入院期間も約1週間ですみますが、軟骨がかなり痛んだ方は軟骨の痛みが残りますので、半月板のみ傷んだ方が適応となります。
2.脛骨高位骨切り術:
内反膝(O脚)の方では、すねの骨を膝関節に近い所で一度骨を切り、理想の膝の形に整え、プレートとスクリューで固定し、骨がつけばプレートを取り外します。
最終的には体の中には人工物が一切なく、正座可能の方も多数いらっしゃいますが、骨がつくまで約3ヶ月かかります。
入院期間は約2週間です。


図5:術前レントゲン像


図6:脛骨高位骨切り術後レントゲン像

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3.人工関節部分置換術:
(1)単顆置換術
内側か外側どちらか一方のみの軟骨が磨耗した方に適応があり、擦り減った関節面のみを人工関節に置き換える手術です。
術後正座できる方も多数いらっしゃいます。
入院期間は約2週間です。

図7:術前レントゲン像

図8:人工膝単顆置換術後レントゲン像

図9

図10

図11

図12


図13:正座時写真

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(2)膝蓋大腿関節置換術
膝の皿(膝蓋骨)と大腿骨との間の軟骨が消失し、他の部分の軟骨が残っている場合に適応があります。

正面

側面


軸写

図14:術前レントゲン像

正面

側面

図15:部分置換(膝蓋骨)術後レントゲン像

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(3)部分置換術 + 靭帯再建術:
部分置換術と膝の靭帯再建術を組み合わせた手術です。靭帯断裂と一部の軟骨が摩耗した方に適応があります。

正面

側面

図16:部分置換術 + 靭帯再建術後レントゲン像

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4.人工膝関節置換術:
現在最も変形性膝関節症の手術で多く行われている手術です。
内側も外側も関節面を削り、表面に人工物で覆います(関節全部を入れ替える手術ではありません)。
耐久性は90%以上の方が20年間以上もつ優れた手術ですが、術後正座できる方は少ないという欠点もございます。
膝に挿入する材料は、金属(コバルトクロムやチタン合金)とプラスチック(超高分子ポリエチレン)を使用します。
正座可能になるように設計された人工関節です。
入院期間は2〜3週間です。


図17:術前レントゲン像


図18:人工膝関節置換術後
レントゲン像

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5.MIS(最小侵襲手術)について :
従来の人工膝関節置換術は15〜30cmの皮切で筋肉を大きく切る方法が一般的ですが、 当院ではお皿の骨(膝蓋骨)を避けるように側面から5〜9cmの小さい傷で筋肉を できるだけ傷つけずに手術をするMIS(最小侵襲手術)という最新の手術を行います。
小さな切開部を通して関節の隅々まで確認しながら手術器具を入れて行うため、 技術的に難しく、ごく一部の施設でしか行っていませんが、術後の回復が早く整容面でも優れています。
また、表皮の下の真皮を細かく縫い合わせる真皮縫合により傷が目立たず、抜糸も不要で外見の不安も解消できます。
小皮切は医師の経験や技量によって大きく左右される手術ですが、日本に導入されてすぐの 2002年7月にいち早く取り入れました。
当院では、一部の患者様を除きほとんどの方がMISで手術を行います。
MISの研修施設にも認定されており、全国からこの技術を習いに整形外科医が見学に来ています。


図19:従来の人工膝関節置換術


図20:MIS(最小侵襲手術)


図21:抜糸必要な症例で
皮膚にホチキスがかかっている


図22:抜糸不要の手術

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