外反母趾について

原因

外反母趾は、日本でも草履や下駄を履いていた頃はあまり知られていなかったようですが、日本へ西洋化が押し寄せてきた以降は、急激に外反母趾が急増していったようです。
スライドの5〜7枚目にありますように人類は猿から進化したと考えられており、猿は木に登るために後ろ足も人間の手のように使いこなします。
したがって、足の指も手の指と同様に親指と他の4本の指が向き合うようになっています(対立運動)。
しかし、人類は二本足で立って歩くようになってから足の親指は物をつかんだりする必要性がなくなってしまいました。
そこで親指も他の指同様同じ平面でしか動くことができなくなったと考えます。
そして、ハイヒールのような極端に足先に体重がかかりなおかつ先が細く変形を誘発する靴を履くことによって急増したと考えられます。

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ギリシャ足とエジプト足

生まれつきの足の形態にも個人差があり、ギリシャ足とエジプト足と呼ばれております(スライド14〜18)。
これは、ギリシャ人に多いとかエジプト人に多いとかではなく、絵画など美術品の足の形の傾向からとったものです。
ギリシャ足は母趾が他の趾より短いタイプであり、エジプト足は母趾が5趾の中で最も長いタイプであり、中間型は母趾と2番目の趾が同じ長さのタイプをいいます(スライド19)。
以前、当院の看護師さん30名の足の形態を観察させてもらったところ、エジプト足が最も多いことがわかりました(スライド20)。
しかし、この形態による外反母趾の発生頻度は分かっておりません。

年齢的な変化

加齢によっても足の形に変化が生じてきます。
スライドに示すように正常な足の形状は、横から見ると土踏まずのところが窪んでおり縦アーチがあります。
一方、正面から見ても横アーチがあります。
加齢とともに足の趾に付着している靭帯や腱が緩んだり、筋肉が衰えたりすると、これらのアーチが減少し足の幅が広がり(開張足)いわゆるベタ足になってしまいます(スライド22〜24)。
この様に3次元的に変形が進行すると本来立ったり歩いたりする時に体重がかかる場所が母趾の付け根から2番目や3番目の趾の付け根に移動します。
外反母趾で悩んでいる患者さんから、どうして母趾は痛くないのに2番目の趾が痛いのか疑問を投げかけられることがよくありますが、理由はこのためです(スライド25)。

保存療法

保存療法の基本は、靴を適正なものに変更したり中敷(インナー)を挿入します。
また、人類が使わなくなった母趾周囲の筋肉の強化訓練(スライド9〜11)を行います。
装具療法をスライド12〜13に示しますが、装具による効果は痛みの軽減であって変形を矯正するまでの効果は少ないと思って下さい。

手術療法

手術治療は、立って撮影したレントゲン像で母趾の角度が30度以上の方に行っております(スライド27)。
手術方法も多彩にありますが、最も効果があって再発の危険性が少ない方法を行っております。
術前後のレントゲン写真で見比べて頂いても外反母趾が矯正され横から見たアーチも改善されていることがおわかりでしょう(スライド29〜31)。
入院期間は約2週間です。

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